股関節深層外旋6筋の作用とストレッチ方法
梨状筋ばかりストレッチしていませんか?
これは一例ですが、
梨状筋症候群の患者に対して、梨状筋のストレッチだけ行っても必ずしも良くはなりません。
梨状筋よりも下方にある内閉鎖筋や上・下双子筋で坐骨神経の圧迫を受けるケースもあります1)。
この場合は、内閉鎖筋や上・下双子筋にアプローチしなければ症状の改善は得られないのです。
そのため、各筋の作用や伸張肢位をしっかりと考慮してストレッチを行う必要があります。
そもそも、
股関節の外旋作用を持つ筋肉には、
大殿筋
中殿筋後部線維
内閉鎖筋
大腿方形筋
梨状筋
大腿二頭筋
下双子筋
上双子筋
小殿部筋後部線維
外閉鎖筋
(股関節外旋作用の大きい順2)に記載)
があります。
この中で、赤字で示しているものが深層外旋6筋です。
股関節深層外旋6筋は、股関節の安定性に寄与しています。
臨床では、股関節インピンジメントや坐骨神経痛の治療対象となることがよくあります。
大事な筋群ですが、ひとつひとつが小さく、その作用が曖昧になりやすいです。
そこで今回は、
股関節深層外旋6筋の各作用と他動的ストレッチ法
についてまとめます。
梨状筋
作用
外旋、伸展および股関節屈曲位での外転
(股関節屈曲0°では外旋、60°では回旋作用なし、90°では内旋と作用が変化します。こちら梨状筋のストレッチ方法とは? - 理学療法士による理学療法士のためのブログに梨状筋の詳しい作用や最適なストレッチ方法を記載しています。)
他動的ストレッチ法
背臥位で股関節屈曲90°位から屈曲、内転、外旋方向へ伸張します。
内閉鎖筋
作用
外旋、わずかな伸展および内転
対側への骨盤回旋
他動的ストレッチ法
背臥位で股関節屈伸、内外転中間位で内旋方向へ伸張します。
伸展、外転、外旋の等尺性収縮で強い筋活動を示す2,3)ため、Ib抑制を併用したストレッチがオススメです。
外閉鎖筋
作用
内転、外旋および、わずかな屈曲
内転作用が最も強い
他動的ストレッチ法
背臥位で股関節屈曲0°・外転位とし、内旋方向へ伸張します。この時、セラピストはストレッチ側のASISを徒手で固定し、対側への骨盤回旋を防ぎます。対象者には対側の下肢を屈曲・外転位で抱え込む形で固定してもらうことで、より伸張を強めることができます。
大腿方形筋
作用
内転および外旋
対側への骨盤回旋、同側の骨盤挙上
他動的ストレッチ法
背臥位で股関節屈曲0°・外転位とし、内旋方向へ伸張します。この時、セラピストはストレッチ側のASISを徒手で固定し、対側への骨盤回旋を防ぎます。対側の股関節を最大外転位で固定することで、より伸張を強めることができます。
上双子筋
作用
わずかな外旋
他動的ストレッチ法
内閉鎖筋と同様の方法でストレッチが可能です。
下双子筋
作用
わずかな外旋
他動的ストレッチ法
内閉鎖筋および上双子筋と同様の方法でストレッチが可能です。
いかがでしょうか?
目的の筋肉を正確に伸張するその技術は、理学療法士の腕の見せ所ではないでしょうか?
情報は随時更新していきます。
参考・引用文献
1) 川谷義行,他:梨状筋症候群の診断と病因.西日脊椎研会誌,1998;24(2):255-261.
2)市橋則明:身体運動学 関節の制御機構と筋機能.株式会社メディカルビュー社,2019.
3)NEUMANN, Donald A.: 筋骨格系のキネシオロジー 原著第3版. 医歯薬出版, 2018.
4)林典雄:セラピストのための機能解剖学的ストレッチング 下肢・体幹,株式会社メディカルビュー社,2019.