理学療法士による理学療法士のためのブログ

理学療法士のタメになる情報発信をしていきます。

胸郭出口症候群の解剖学~圧迫・牽引される3か所とは~

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胸郭出口症候群に自信を持った理学療法を展開できていますか?


神経症状が絡むと、なんとなくつかみどころがなくて難しいし、とりあえず良い姿勢をとってもらおう!


といった治療展開になっていませんでしょうか?


姿勢を修正することで、症状の改善が得られるケースはもちろんありますが、

それだけでは壁にぶち当たることもあります。



胸郭出口症候群とは、腕神経叢鎖骨下動脈鎖骨下静脈が圧迫や牽引されることで起きる症状の総称です。


あくまで 総称 なので、発生の原因をしっかりと評価し、アプローチする必要があります。



そこで今回は、

基礎となる 胸郭出口症候群の解剖学 について整理していきます!

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患者さんに力を抜いてもらうには~筋緊張に影響する因子と対処法~

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「力を抜いて下さい」ってよく患者さんに言ってませんか?


そうは言っても、なかなか力みが抜けないのが患者さんですよね。


そもそも患者さんは、力が入っているという自覚が無いことも、よくあります。

セラピストがROMex.やストレッチを行うときには、すごくやっかいです。



この「力み」は、筋緊張の異常(亢進)と考えられます。


筋緊張の異常には、

脳血管障害などの中枢神経系の異常によって引き起こされる痙縮固縮であったり、

運動器疾患でよくみられる、疼痛に伴う防御性の筋緊張亢進

など様々です。



今回は、臨床場面で

”患者さんに無駄な力を抜いてもらう” ことをテーマに、


筋緊張に影響を及ぼす因子は何か
力みやすい患者にどう対処したら良いか


をまとめていきます。



それではさっそく、、、


まず、筋緊張に影響を及ぼす因子は、これらになります!

固有感覚制御
覚醒・注意・意識
フィードバック・フィードフォワード
視覚刺激・聴覚刺激
味覚・嗅覚
知覚・認知
精神症状・記憶
温度覚、痛覚
自律神経症
支持面の状況
筋の粘弾性、速筋、遅筋
軟部組織の短縮
バイオメカニクス
加齢・成長・体重
性差
表現型
既往症
感情・情緒
その他

以上、1)より引用


たくさんありますよね。。。

実際には、これらの要素が混在して筋緊張の異常を起こしています


この中で、理学療法を開始する前に、


患者さんの力みを抑制するために重要な要素が、

支持面の状況 です。


支持面とは、ヒトと外部環境との接触 のことで


支持面が広ければ広いほど姿勢が安定し、筋の過緊張を抑制できます。


片足立ちをしているよりも、背臥位の方がリラックスできますよね?


当然だと思うかもしれませんが、これをしっかり意識して患者に触れているかが重要です。



例えば、

背臥位の患者さんの下肢を操作するときに、


指先で持つよりも手掌面で、

片手で持つよりも両手で、

持つよりもセラピストの足にのせて、


行ったほうが、余計な力みを誘発せずにアプローチできます。



また、支持面自体の安定性も大事です。


例えば、

ぐらぐらな橋の上で眠るよりも、ホテルのベッドで眠った方がリラックスして眠れますよね?



これはつまり、

セラピスト自身が安定した姿勢でアプローチしなければ、患者さんはリラックスできない


という事です。


これにはもちろん心理的な要因も影響します。



まとめますと・・・


理学療法を開始する前に、


広い支持面で患者さんに触れているか
自分の姿勢が無理なく安定しているか


この2点を意識してアプローチしてみましょう。


そうすると、患者さんが無意識に安心感を得られ、ふわっと緊張を解いてくれます。



初歩ではありますが、


理学療法士として大事な一歩ですよね。


もちろん、筋緊張を亢進させる原因が痛みや脳機能の異常である場合には、その根本原因へのアプローチも求められます。

この辺りについても、今後記事にしていきたいと思います。


理学療法は奥が深い。。。



参考・引用文献
1)斉藤秀幸,他:筋緊張に挑む 筋緊張を深く理解し,治療技術をアップする!.株式会社文光堂,2015.

股関節深層外旋6筋の作用とストレッチ方法

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梨状筋ばかりストレッチしていませんか?


これは一例ですが、


梨状筋症候群の患者に対して、梨状筋のストレッチだけ行っても必ずしも良くはなりません。


梨状筋よりも下方にある内閉鎖筋や上・下双子筋で坐骨神経の圧迫を受けるケースもあります1)。

この場合は、内閉鎖筋や上・下双子筋にアプローチしなければ症状の改善は得られないのです。


そのため、各筋の作用伸張肢位をしっかりと考慮してストレッチを行う必要があります。



そもそも、

股関節外旋作用を持つ筋肉には、


大殿筋
中殿筋後部線維
内閉鎖筋
大腿方形筋
梨状筋
大腿二頭筋
下双子筋
上双子筋
小殿部筋後部線維
外閉鎖筋

(股関節外旋作用の大きい順2)に記載)


があります。
この中で、赤字で示しているものが深層外旋6筋です。


股関節深層外旋6筋は、股関節の安定性に寄与しています。

臨床では、股関節インピンジメント坐骨神経痛の治療対象となることがよくあります。


大事な筋群ですが、ひとつひとつが小さく、その作用が曖昧になりやすいです。



そこで今回は、

股関節深層外旋6筋各作用他動的ストレッチ法

についてまとめます。
 


梨状筋
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作用
 外旋伸展および股関節屈曲位での外転

(股関節屈曲0°では外旋、60°では回旋作用なし、90°では内旋と作用が変化します。こちら梨状筋のストレッチ方法とは? - 理学療法士による理学療法士のためのブログに梨状筋の詳しい作用や最適なストレッチ方法を記載しています。)
 
他動的ストレッチ法
 背臥位股関節屈曲90°位から屈曲内転外旋方向へ伸張します。



内閉鎖筋
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作用
 外旋、わずかな伸展および内転
 対側への骨盤回旋
 
他動的ストレッチ法
 背臥位股関節屈伸、内外転中間位内旋方向へ伸張します。
 伸展外転外旋等尺性収縮で強い筋活動を示す2,3)ため、Ib抑制を併用したストレッチがオススメです。



外閉鎖筋
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作用
 内転外旋および、わずかな屈曲
 内転作用が最も強い
 
他動的ストレッチ法
 背臥位股関節屈曲0°・外転位とし、内旋方向へ伸張します。この時、セラピストはストレッチ側のASISを徒手で固定し、対側への骨盤回旋を防ぎます。対象者には対側の下肢を屈曲・外転位で抱え込む形で固定してもらうことで、より伸張を強めることができます



大腿方形筋
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作用
 内転および外旋
 対側への骨盤回旋、同側の骨盤挙上
 
他動的ストレッチ法
 背臥位股関節屈曲0°・外転位とし、内旋方向へ伸張します。この時、セラピストはストレッチ側のASISを徒手で固定し、対側への骨盤回旋を防ぎます。対側の股関節を最大外転位で固定することで、より伸張を強めることができます



上双子筋
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作用
 わずかな外旋
 
他動的ストレッチ法
 内閉鎖筋と同様の方法でストレッチが可能です。



下双子筋
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作用
 わずかな外旋
 
他動的ストレッチ法
 内閉鎖筋および上双子筋と同様の方法でストレッチが可能です。



いかがでしょうか?


目的の筋肉を正確に伸張するその技術は、理学療法士の腕の見せ所ではないでしょうか?


情報は随時更新していきます。


参考・引用文献
1) 川谷義行,他:梨状筋症候群の診断と病因.西日脊椎研会誌,1998;24(2):255-261.
2)市橋則明:身体運動学 関節の制御機構と筋機能.株式会社メディカルビュー社,2019.
3)NEUMANN, Donald A.: 筋骨格系のキネシオロジー 原著第3版. 医歯薬出版, 2018.
4)林典雄:セラピストのための機能解剖学的ストレッチング 下肢・体幹,株式会社メディカルビュー社,2019.

臨床で本当に使える体幹の筋機能評価法

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体幹機能を評価するって難しくないですか?


そもそもどう評価したら良いかわからない

という理学療法士も多いのではないでしょうか。


体幹の評価方法には、
 
体幹筋持久力を評価する
 trunk flextionテスト や trunk extensionテスト、side bridgeテスト...

体幹安定性を評価する
 Sahrmannテスト

その他
 Trunk Impairment Scale(TIS)、Functional Assessment for Control of Trunk(FACT)、Trunk control Test(TCT) などなど...


たくさんのテストがありますが、評価法が確立されていないのが現状です。
 
これらのテストの多くは、体幹の機能低下があるかどうかを判断するのには役立ちますが、体幹のどこに問題があるかを評価することが出来ません。
 
また、評価用紙を使ったテストでは時間を要するため、とても臨床向けではありません。


臨床で求められるのは、

痛みやパフォーマンスの低下を招く原因が体幹機能にあるのか、あるとすればどこの組織が原因か

といった事を調べる評価法です。


そこで今回は、


体幹機能に問題はあるのか
問題があるのはどの筋肉か


を即座に評価でき、臨床で非常に有効な検査法をご紹介します。


ずばり、その検査法は・・・

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デュシェンヌ歩行は3パターン存在する!?

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デュシェンヌ歩行には、3つのパターンがあります!


代表的な異常歩というと、トレンデレンブルグ徴候デュシェンヌ歩行(跛行)を挙げる理学療法士は多いのではないでしょうか。


デュシェンヌ歩行とは、


立脚側へ体幹が傾斜し、かつ骨盤の傾斜を伴う歩行1)2)


を言います。


これはご存じの方も多いと思いますが、そのデュシェンヌ歩行には実は3種類あります。


なかには、股関節への負荷が軽減され、有益な場合もあるんです。


それでは、さっそくですが、、、


ずばり!


デュシェンヌ歩行の3パターンはこれです!!

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【話題の本】"五十肩の評価と運動療法"は買うべきか?

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本日発売された"五十肩の評価と運動療法"を待ちわびていた理学療法士は多いのではないでしょうか?


"運動と医学の出版社"から刊行される本は、今や大人気です。


理学療法士なら手元に一冊はあるのではないでしょうか。


さて今回は、"五十肩の評価と運動療法"を購入する気まんまんで、さっそく本屋で手にとってみたので、私なりのレビューをさせていただきます。



ちなみに結論から言いますと、、、

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梨状筋症候群の評価と治療

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殿部に疼痛を抱える患者さんって多くないですか?


梨状筋症候群は、その原因のひとつです。


そもそも梨状筋症候群とは

(主に)梨状筋が固くなったり攣縮することで、その中を通る坐骨神経を締めつけ、神経痛や感覚障害、筋力低下を引き起こす疾患 を言います。


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梨状筋と坐骨神経


梨状筋症候群発生機序には、


①持続的な股関節内旋位固定
②攣縮などによる梨状筋と骨盤外壁との圧迫固定
③内閉鎖筋・上下双子筋による後方への圧排
④術後の坐骨神経周囲の癒着 等


が挙げられます1)
(梨状筋症候群と名はついていますが、あくまで総称であり、その他の外旋筋が原因の場合もあります。)

これらの問題の多くは、理学療法で解決することが出来ます。


今回は、梨状筋症候群の徒手検査による評価方法と治療についてまとめていきます。


さっそくですが、梨状筋症候群に対し行う評価は以下になります。

  • 股関節内旋位でのSLRテスト2)
  • Freiberg(フレイバーグ)テスト2)3)
  • Paceテスト2)3)


 
股関節内旋位でのSLRテスト2)
 背臥位にて、検査側の股関節を内旋位としSLR(下肢伸展挙上)を行います。殿部痛が出現すれば陽性です。

★実践のポイント★
 実際の臨床では、まず股関節内外旋中間位でSLRを行い、最終域になったら股関節内旋を加えるという方法をオススメします。股関節内旋位にした時に殿部痛が出現したり、疼痛が増強する場合は、梨状筋症候群が強く疑われます。
 

Freiberg(フレイバーグ)テスト2)3)
 背臥位にて、検査側の骨盤を固定し、膝屈曲位で股関節屈曲(90°以上)・内旋をさせます。殿部痛が出現すれば陽性です。
骨盤固定で陰性、骨盤非固定で陽性であれば、仙腸関節障害による疼痛を疑います。

仙腸関節障害の評価については、こちらの記事も参考にしてみて下さい)
仙腸関節障害による痛みはどう評価する? - 理学療法士による理学療法士のためのブログ

 
Paceテスト2)3)
 座位にて、検査者の徒手抵抗に抗して、股関節外転・外旋をさせます。殿部痛や筋力低下があれば陽性です。


これらの検査で陽性となったら、まずは梨状筋に対してアプローチを行い、治療を進めていきましょう。


梨状筋症候群では、梨状筋の伸張性が低下しているだけではなく、筋スパズムを起こしている例も多いです。
そのため、治療ではストレッチと併用して反復収縮を促すことが、効果的です。


梨状筋のストレッチ方法については、こちらの記事も参考にしてみて下さい。
forphysicaltherapist.hatenablog.jp



梨状筋症候群による殿部痛は、評価がしっかりと出来ていれば、即時に疼痛を取り除けることが多いです。


まるで魔法のように痛みが消えるため、患者さんも驚き喜びます。


ただし、急性の疼痛であったり、殿部荷重が出来ないほどの強い痛みがあるような例では、神経刺激により疼痛を増悪させる可能性もあるため、注意が必要です。



いかがでしょうか?


治療に悩む理学療法士の少しでも参考になればと思います。


情報は随時更新していきます。


参考・引用文献
1)松本正知, et al. 梨状筋症候群に対する運動療法の試み. 理学療法学, 2003, 30.5: 307-313.
2)林典雄,et.al:関節機能解剖学に基づく 整形外科運動療法ナビゲーション 下肢 第2版.株式会社メジカルビュー社.2015.
3)齋藤貴徳. 梨状筋症候群の診断と治療. 日整会誌, 2006, 80: 406.

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