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結帯動作はどう評価する?~結帯動作の運動学と制限因子~

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結帯動作の獲得に難渋していませんか?


肩関節拘縮のある患者さんを担当し、懸命な理学療法を続けた結果、見事に肩が上がるようになった!


その時に、、、


「先生、肩は上がるようになったのですが、背中に回すとまだ痛いんです」


こういった症例を経験したことはないでしょうか?


結帯動作の制限は、肩関節疾患ラスボスとして君臨することがあります。


そこで今回は、


結帯動作の運動学
結帯動作の制限因子


を書籍や日本文献をもとにまとめていきます。



まず、健常者の結帯動作は、2パターン存在します!


手を腰部に持ってくるまでは、誰しも共通の動作ですが、それ以降には

  • 内転パターン
  • 外転パターン


 があります。



内転パターン
 肩関節を内転させて体幹に近い位置で手を上方に挙げるパターン

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内転パターン
1)より画像引用


外転パターン
 肩関節を外転させて手を上方に挙げるパターン

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外転パターン
1)より画像引用

脊柱に沿ってや、対側の肩甲帯へ向かって挙上する際には、内転パターンが生じやすい1)とされています。

研究論文では内転パターンを検証している文献が多いです。


これを踏まえた上で、、、


結帯動作(内転パターン)の運動学について、各関節の動きに着目してまとめていきます。

  • 上腕下垂位~第5腰椎レベル
  • 第5腰椎レベル~第12胸椎レベル
  • 第12胸椎レベル~第7胸椎レベル

 
以上の3期に分けてまとめます。
 
 
上肢下垂位~第5腰椎レベル

肩甲上腕関節
 内旋、伸展運動が起こります。
 このときに、ほぼ最大に近い内旋運動(40~47°)が行われます。

肩甲帯
 挙上、内転、前傾運動が起こります。

肘関節
 大きな屈曲運動が起こります。
 
 
 
第5腰椎レベル~第12胸椎レベル

肩甲上腕関節
 伸展、内転運動が起こります。
 ですが、肩甲帯や肘関節の運動に比べて小さいです。

肩甲帯
 上方回旋、挙上、前傾が起こります。

肘関節
 大きな屈曲運動が起こります。
 
 
 
第12胸椎レベル~第7胸椎レベル

肩甲上腕関節
 伸展、内転運動が起こります。
 ですが、肩甲帯や肘関節の運動に比べて小さいです。

肩甲帯
 下方回旋が起こります。

肘関節
 大きな屈曲運動が起こります。


ここで大事なことは、、、


上肢を腰部へ持ってくる(上腕下垂位~第5腰椎レベル)までの動作で、肩甲上腕関節がほぼ最大内旋位となることです。


つまり、肩関節内旋の可動域制限がある場合には、腰部までのリーチが出来たとしても、すでに代償を伴っている可能性があるということです。


そのため、上腕下垂位~第5腰椎レベルでは、過剰な肩関節伸展や肩甲帯前傾による代償がないか、しっかりと動作観察する必要があります。



このように運動学を押さえておくことで、制限因子の予測を立てることができます。


では、結帯動作の制限因子となり得る組織についてまとめます。


ずばり!
結帯動作の制限因子となる組織は以下のものになります!

  • 棘下筋 (肩甲上腕関節の内旋制限)
  • 烏口腕筋 (肩甲上腕関節の伸展制限)
  • 棘上筋 (肩甲上腕関節の内転制限)
  • 上方関節包 (肩甲上腕関節の伸展、内転制限)
  • 後方関節包 (肩甲上腕関節の内旋制限)


棘下筋および烏口腕筋が制限因子になることは、日本の論文や学会発表で多く述べられています1-3)


ここに記載している組織は、あくまで肩甲上腕関節の制限因子であることに注意して下さい。


このいずれにも制限がない場合には、肩甲上腕関節以外*で制限を受けていると考え、肩甲帯や鎖骨、胸郭等の可動域評価が必要となってきます。


(*肩関節の機能解剖については下記ページをご参照下さい)
肩関節は5つ存在する - 理学療法士による理学療法士のためのブログ


いかがでしょうか?


結帯動作に苦手意識のあるセラピストの治療の一助となれば幸いです。

情報は随時更新していきます。


参考・引用文献
1)井尻朋人: 肩に関する動作の解釈. 関西理学療法, 2016, 16: 13-17.
2)鈴木静香, et al.:結帯動作の制限因子の追求. In: 理学療法学 Supplement Vol. 39 Suppl. No. 2 (第 47 回日本理学療法学術大会 抄録集). 公益社団法人 日本理学療法士協会, 2012. p. Cb0511-Cb0511.
3)壇順司; 高濱照; 中島喜代彦: 結帯動作と第 2 肢位内旋の制限因子. In: 理学療法学 Supplement Vol. 30 Suppl. No. 2 (第 38 回日本理学療法学術大会 抄録集). 公益社団法人 日本理学療法士協会, 2003. p. 128-128.
4)村木孝行:肩関節・頚部痛のリハビリテーション,株式会社羊土社,2018.

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